水槽と家具

2009年 魚類学会年会(その2) 【生物学】

Posted on: 10月 22, 2009

気付くと丸々2週間も前になってた、今回は12日の講演の話。
同じ時間帯で、市民公開シンポジウムも開催されていた。

  • 国内外来魚問題の現状と課題

  • 日本在来魚における適応的文化:その実態とエコゲノミクスへの展望

  • 迫り来る温暖化から魚類を救え -魚類学者たちの挑戦-

自分が参加したのは2番目の「在来魚における適応的分化のシンポ、司会は福井県立大の小北先生と新潟大の山平先生。最初は司会の小北さんから趣旨説明。

遺伝子機能の特定が進んだことや塩基配列の種間/集団間での比較が容易にできるようになった。こうしたDNA情報に対して集団遺伝学的な解析を用いれば、自然淘汰や適応的分化といった仮説を検証する強力なツールになる、という前振り。
そうしたエコゲノミクスの実例として、Sutterらによる犬の体サイズを決める遺伝子の研究が紹介された(*1)、大型と小型の品種で比較するとIGF1(インスリン様増殖因子)という遺伝子で大きな差があり、この遺伝子に人為選択が働いた証拠となる。 とまあ、実証ツールとしてのエコゲノミクスは理解できた。 しかし何を目的にやるのか、はっきりしない。

でも、まずは北大の玉手さんによる発表

降海型サクラマスにおける死亡率と体サイズの性差の個体群間比較:地理的パターンに関する予測

サクラマス(Oncorhynchus masou)で観察されるSSD(Sexual Size Dimorphism = 性的サイズ二型)の原因は何か、という疑問が提示される。人間では雌雄で身長は1割くらい違うが、こうした体サイズの性差は他の動物にもある。一般的に体サイズが大きいほど、オスならば同種個体間の競争でのアドバンテージ、メスならば卵に投資できるエネルギー量が大きくなるため両性ともにメリットがある。しかしながら、大きな体サイズを達成するには積極的に餌を摂る必要があるなど、捕食リスクとのトレードオフがあると予想される。そこで、サイズが大きい方の性で死亡率が高いか複数の河川の個体群で検証している。降下するスモルト/遡上する成魚の性比をそれぞれ調べると、サイズが大きい方の性で死亡率が高い傾向があった。

うーん。死亡率の性差がSSDをもたらす、というのは直感的に腑に落ちない。
大きなサイズによるアドバンテージがあっても死亡率が高いとなると、差し引きゼロにならないのだろうか。あと成長・捕食のトレードオフ関係が検証抜きで暗黙に仮定されているところが気になった、その辺りは検証を要するところじゃないだろうか。他の研究者が似たような仕事をやってるかもしれないけど。 一番気になったのは、河川ごとで集団の性比が大きくバラつくというとこ。サンプリングエラーにしては大きすぎる気もするから、死亡率なりその他の生活史パラメータが河川ごとで違うのだろう。遡上期の性比によっては、性淘汰の強さも大きく変わって来そうだ。

 

変化し続ける魚、適応し続ける魚:

ヒガイ類にみる琵琶湖固有魚類の多様化メカニズム

京大の小宮さんによる琵琶湖の固有種ビワヒガイの進化についての話。色々な解析手法を使って様々な切り口から、ビワヒガイとアブラヒガイの進化を検討している。

地質学的な年代推定による琵琶湖の古環境の推定から、沿岸部の岩礁帯が湖面の変動で出現したり消えたりするという話が興味深かった。水深が深くなると、堆積物に埋もれてしまって岩礁帯が無くなるなど。あと頭部形態に対して幾何形態測定(Geometric morphometrics)を使ってグループ間の差異を検出したとこや、コアレッセンス理論を使った分岐年代の推定など。聞いたことはあるけど、使ったことは一度もない解析手法がごろごろ出てきて面白かった。しかしながら、ビワヒガイとアブラヒガイには形態的特徴で明瞭な分化が見られるにも関わらず、遺伝的分化は見られないらしい…
交雑が頻繁に起きてるのか、隔離が形成されたのがつい最近なのか。同発表者のポスター発表で、繁殖時にオスの鳴き声がシグナルになって貝に産卵するという話があったから、カエルのように鳴き声の違いが生殖隔離につながったりするのだろうか?

関係ないけどカエルの鳴き声が種によって特異的なのは有名なんだけど、これが生殖隔離の決め手になってるって論文が見つからなかった・・・たぶんあると思うから今度、探しとこっと。
(*2 カエルの論文あった 2010/02/22追記)

亜寒帯性種と温帯性種の分布境界域に形成された交雑帯での雑種の適応戦略:アイナメ属魚類の事例

数年前から生態学会でちょくちょく聞いていた話だけど、一段落したみたい。

北海道には、スジアイナメ・アイナメ ・クジメの同属3種が同所的に分布する地域があって、交雑が頻繁に起こっている。で、どんなメカニズムでそれが維持・形成されてるかって話。
野外ではスジアイナメの♀と他種のオス間でF1雑種が観察されて、人工授精を行ってF2雑種もできることが知られていた。にも関わらず、DNAの解析を行うと3種間での遺伝子浸透は起きていない。どうやら、F2雑種ができるときに父親由来のDNAだけが排除されるため、雑種はできるけど種間で遺伝子浸透が起きない、という特殊な状態が維持されているらしい。 半クローン生殖の説明のあとは交雑帯が狭い範囲に限定されている理由を、種/雑種間で異なる産卵温度の最適値が違うことを根拠にしてたけど、雑種個体が頻繁に見られるらしいから、クジメやアイナメが北に進出できないのは雑種形成による損耗が要因として大きいんじゃないかなーと思った。

 

長くなってしまったので、続きはまた今度。

 

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