水槽と家具

新「人口論」生態学的アプローチ 【経済】【読書メモ】

Posted on: 1月 6, 2010

環境問題は経済問題である以上に、人口問題って面がある。
なので、この辺の人口統計学にも興味があって、ちまちま読書中。

 

原題 How many people can the earth support?
邦題 新「人口論」 生態学的アプローチ

著者 Joel E. Cohen
訳者 重定南奈子, 瀬野裕美, 高須夫悟
出版 農山漁村文化協会 (1998/04)

 

本書の主題は、互いに絡み合った2つの問い。

  1. 地球上には、どのくらいの数の人間が住むことができるか?

  2. 人口の増加・減少はどんな要因に左右されるか?

著者の本業は数学で理論構築を行う数理生態学らしい。でも、この本に数式は全く出てこない。その代わり600ページ近い大部なんだよね・・・よくこれだけ書いたもんだわ。地球の人口許容量と人口の増減に関わる要因をネチネチとひたすら、積み上げて検証していく。しかも答えがない、というか答えを決めるのはあくまで読者というスタンス。これを書いた著者の驚異的な忍耐力に乾杯、自分は年末~正月の一番おめでたい時期に読んで、死にたくなったぜ!

人口の推移の「予測」に人口学は失敗してきた、という話題から導入が始まる。
19世紀の先進国で始まり、20世紀後半から中国やインドの発展途上国で起こった各国の人口増加率の減少(=人口転換)を予見できなかったことや国連による5年・10年先の人口の予測値と実測値とのズレ。そして地球上に住める人口の数の推計は、研究者によって10億~1000億と大きなバラつきがあることが紹介される。人口の推計に大きなバラつきが生じるのは、前提条件が研究者によって大きく異なるから。

 


(085/365) Big Macccc / MarksandSparks
クリエイティブ・コモンズ 表示-改変禁止 3.0

 

例えば、アメリカ人のようにビッグマックとステーキをたらふく食う生活をするには穀物を与えて牛を育てなければいけない。穀物 → 家畜 → 人間とよけいなエネルギー段階が増えるので、得られるのは穀物を食べる場合の10%程度のカロリーしかない。

また、ある面積の農地から得られる穀物の量は、農薬や化学肥料の仕様、灌漑による水の適切な供給といった技術により大きく変化する。技術発展が人口の限界を克服するという考えは、山形浩生(公式サイトはこちら)がEconomist の記事の翻訳「まちがった預言者マルサス」で詳しく紹介している。

本書ではさらに、文化が人口増加率の増減に大きく影響することも挙げている。女性の社会進出や避妊具の使用率の普及、学校教育の開始が子供の養育にかかるコストを親が自覚するようになったことなどが、人口増加率の抑制につながるという研究が紹介される。

 

こうした複雑な要因が、地球上における人口の許容量という一見、単純で簡単に答えが出そうに見える問題を政治・経済・科学・教育・宗教をまぜこぜにした恐ろしい複雑怪奇な問題へと昇華させるのである。

 

日本では少子化が叫ばれていいかげん耳にタコができそうなくらいだ。

経済的な先行きの不透明さ、派遣労働による若年層の所得水準の低下、見合い・社内恋愛といった男女の接点の減少、高学歴による出産年齢の高齢化、教育費など養育コストの高さなどなど、これだけ積み重なれば出生率も低下するわなー。
本書は少子化問題の解決策を持っているわけではない、むしろ反対に人口過剰をどう抑制するかという観点の方が強い。ただ、そのための対策として書かれている方法は、少子化対策でも同様に当てはまるものがある。経済成長や女性への社会的地位の付与、男性に対する教育、その他もろもろ。現政権が扶養手当を子供手当てに貼りかえるのも、子供を持つことに経済的なインセンティブを与えるって方法だしね。

とはいえそうしたマクロな政治・経済的な問題がどう影響するのであれ、究極的には子供を持つかどうか、持つなら何人持つのか、という一人一人の選択の積み重ねが人口という大きな趨勢を形作っていくのだという本書の観点は、興味深い。人類の存続とか、国がどーだこーだ、地球環境が保たないとか、人口に付随するややこしい問題はたくさんあるけど。つまるところ、いちばん重要なのは、ベッドに入るときコンドームを付けるかどうかなわけだ。

男性諸君は特に気をつけて。

 

次に読む本はこれ、「10万年の世界経済史」。
図書館で一緒に借りてきたからあと2週間以内に読まんとなー

 

今回読んだ本が、産業革命以降の人口増加に焦点をしぼってるのに対して、この本はタイトルから想像するに狩猟採集~農耕文化までを中心に扱ってるんじゃないかと予想。

キーワードは、マルサスの罠

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