水槽と家具

日本分類学会連合の公開シンポ、「生物地理学の未来を考える」に参加 【生物学】

Posted on: 1月 14, 2010

1/9に東京の大久保で開かれ公開シンポに参加した。
日本分類学会連合のサイトのトップでは趣旨とプログラムを見ることができる。

演題をコピペするとこんな感じ。(リンクは研究者・組織の紹介しているサイト)

  • 「淡水魚の分子系統地理の現状と今後の展開」
    渡辺 勝敏(京大・理・動物生態)
  • 「樹木と共に生きる菌類の生物地理学-生態学的アプローチによる展開」
    広瀬 大(日大・薬)
  • 「海洋生物の分布データベース-現状と可能性」
    田中 克彦・藤倉 克則・山本 啓之・丸山 正(JAMSTEC
  • 「琉球列島の特異な地史と生物地理」
    松岡 廣繁(京大・理・地鉱)
  • 「植物分類学者から見た生物地理」
    加藤 雅啓(科博・植物)

また学会のサイトからPDFの要旨がまるまる読める。詳しく知りたい人はそっちを参照。
ここでは、魚関連の演題について大雑把な感想を書きます。

渡辺さんの発表は日本の魚類相と地理的分布の関係。 魚の自然史で触れていた内容をさらに掘りすすめた感じだ。フォッサ・マグナを境におおきく東西で分かれることや琵琶湖や九州の固有性が高いことが紹介された。

後半はDNA分析が、簡単・低予算にできるようになったので、地域個体群のレベルでDNA情報が集められているという話題だ。魚類学会の記事でも話題にしたカマツカカワムツの事例や、京大が提供するGEDIMAP (遺伝的多様性・系統地理データベース)が紹介された。

最後に生物地理学の未来として、「生態学」の理論を「遺伝」データで裏付ける「エコゲノミクス」が話題にあがった。淡水魚では種によって多様な遺伝的構造が見られ、山脈のような地理的障壁だけでは説明がつかない。こうした多様性の一部は、氷河期の海水準変動による生息地の増減といった歴史が影響しているのではないか、という仮説だ。これはつまり、Macarthur と Willson がとなえた種数面積効果の時間変動版だ(*1)。九大の矢原さんもブログで、GIS(Geographic Information System)のような技術の進歩もあり、系統(=時間)、分布(=空間)、生物の統合的なアプローチが、目前にあることを指摘している(*2)。

 

魚に関する演題としてもう一つ、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の話題があった。これは機構の事業説明といった感じ。2000年から現在、国際協同プロジェクトとして「海洋生物のセンサス」が進められており、その結果は各国の研究機関などが運営するデータベースを統合するOBIS(Ocean Biogeographic Infomation System) から閲覧することができる。

 

obis_sample
OBISを用いて検索、地図上に採集記録がプロットされる

 

このプロジェクトの一環として、同機構が日本産の海洋生物を対象とした BISMaL (Bilogical Information System for Maline Life) というデータベースを作成するらしい。日本周辺のデータはOBISには、あまり登録されてないらしい。討論では水産庁などが保有する未公開データを引っ張り出す当てはあるのか、といった政治的な(笑)話題が出る一幕もあった。

実際の研究との関連としては、緯度・経度のような地理情報のほかに平均水温のような環境データを組み合わせることで、外来種が定着するおそれのある地域を推定したり、視覚化するのに用いることができるとのこと。

 

どっちの話題も情報科学ときわめて繋がりの深い話だった。全世界の海洋生物の分布から、日本にしかいない淡水魚種の地域個体群の遺伝的変異まで、どこもデータベースにドカドカ情報を詰め込んでいるという話。こうして蓄積された大量のデータを使わない手はない。

遺伝学や生化学の分野では、莫大な塩基配列を用いるためバイオインフォマティクスが一般的ツールになっているが、生物地理学だけでなく生態学のようなマクロの分野でも今後、それが顕著になっていくだろう。例えば、衛星画像から植生を推定するといったことも行われている(*3)。

 

生物地理学が記載の学問から、仮説検証・予測を含めた科学へと今後も発展を続けていくのは間違いないだろう。それを支える土台にあるのは、コンピューターによる情報科学というわけだ。

 

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