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無料経済は実現するか?アンダーソンのFREEをフリーで読んだ 【読書メモ】【経済】

Posted on: 4月 28, 2010

原題:FREE: The Future Of A Radical Price
邦題:フリー <無料>からお金を生み出す新戦略
著者:Chris Anderson
監修・解説:小林弘人
訳者:高橋則明
出版:NHK出版

 

フリーと言っても特別なことをしたわけではなく、単に図書館から借りたのだ。Wired Visionの記事「クリス・アンダーソン著『フリー』、邦訳発売前に無料で全文公開」を読んで、すぐ予約を入れたのに結局、半年近くも待たされてしまった!おかげで旬は過ぎてしまった・・・Webのトレンドは、フリーからソーシャルグラフへ移りつつあるという話もある。

とはいえ、この本が主張していることは面白い。伝統的な経済学の言葉でまとめるなら、

デジタル情報は複製が可能なために、供給に制限がない。一方、享受する人間の時間は有限なので需要が制限されている。それゆえ均衡価格は0、つまりフリーに限りなく近付く、

といったところか。

 

フリーを成立させる方法

無料の心理学的な有効性について、「予想通りに不合理」の事例が引用されたり、広告効果を狙って無料で商品を配る戦略は歴史が古い、という話から導入が始まる。以前に自分も書評で書いたが、コカ・コーラの創業時代にも広告を狙った無料引換券が存在していた。強力な広告のツールとして、フリーが有効に機能するという点が強調される。

こうしたフリーのビジネスモデルをアンダーソンは以下の3つに分類する。

  • 直接的内部相互補助

利益の一部を移転することで無料サービスを提供する。1円ケータイと言われた、携帯の端末代と通話料金の関係。ショッピングモールの無料駐車場、レストランの無料の香辛料など

  • 三者間市場、あるいは市場の”二面性”

クレジットカードは利用者が使うカードの手数料を商店が負担している。Google を始めマスメディアは広告で利益をあげる。利用者によって生じるコスト(100万ものサーバーにかかる電気代、サービスの開発費用)は広告主が負担することで、フリーなサービスが提供できる。一方、サービスの利用者は広告商品を買うなど間接的に、システムを支えている。

  • フリーミアム

基本サービスは無料で、拡張サービスを受ける5~10%の有料会員が他の無料会員のコストを負担する。flickrmixi, ニコニコ動画に限らず、多くのネットゲームもこれに含まれる。

 

過剰供給が生む問題点?

話の肝はデジタル情報は常に供給過剰になっている、という点だ。Web においてコンテンツがいかに供給過剰なのかは、Gigazineの記事「一体オンラインで何曲売れば、アーティストは生活していくことができるのか?を表す図」を見ると視覚的に理解できると思う。

アメリカの最低賃金を音楽で稼ごうとすると、自費出版のCDは約150枚売れば達成できるが、オンラインの無料ストリーミング配信では450万回視聴される必要がある。いったい、どちらが「楽」だろうか? Webの現状はどうやって自分のコンテンツへ他人の意識をひったくってくるか、という超過密競争状態だということが分かる。

ネット通販やSNSといったコンテンツ以外のサービスでも状況は似たり寄ったりだ。Webの発展が進むと、あらゆる労働はフリードマンが「フラット化する世界」で示したように、相対的に安い地域にアウトソーシングされるか、Google や Amazon のような勝者総取りのどちらかになるだろう。ただ、こうした「独占」がもたらす大きな社会的インパクトとして、「無料提供されるサービス」が拡大していくということだ。これをアンダーソンは「ポスト稀少時代」と表現する。

 

「ポスト稀少時代」には、エネルギー問題の解決が不可欠

うーん、しかし本当の意味で「ポスト稀少時代」を実現するには、エネルギー問題の解決が不可欠だと思う。なぜなら、我々の快適な文明生活は第一に、大量の化石燃料を消費することで維持されているからだ。で、それらの稀少性は新興国需要もあるから、高くなることはあっても下がることはない。資源動向の力学は、フリーとは真逆の状態だ。

Google のエンジニアがハードウェアにかかるコストよりも電気代の方が高くなる可能性を指摘しているが、エネルギー供給は今後も多くの産業でネックになるだろう。とはいえ、エネルギー問題は難しい。水素からの核融合発電でも実現されれば、フリーエネルギーにかなり近い状態になると思うんだけどなあ。でもまあ、それはまだ当面先の話。

 

ところで、自分は当たり前のように経済的なフリーが存在しうるという前提で話をしているが、アンダーソンによると30歳以上の人(つまり若い頃にIT革命を経験していない人)は、フリーという状態が成立すると直感的に理解できない、という話があった。

実際のところ、どうだろう?

 

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