水槽と家具

30kgに成長するまで約3年、「世界初!マグロ完全養殖」 【読書メモ】【生物学】

Posted on: 6月 7, 2010

原題:世界初!マグロ完全養殖 -波乱に富んだ32年の軌跡-
著者:林宏樹
出版:株式会社化学同人, 2008, 11, 20 初版

2002年に近畿大学はクロマグロの完全養殖を実現したが、その長い道のりを振り返った本。
ちなみに、近代が育てたマグロは株式会社アーマリン近代という水産研究所が母体の企業が食用として販売している。稚魚から約3年で30kgまで成長し、このあたりのサイズが成長と価格のバランスで出荷するのに最適なサイズらしい。

完全養殖とは、稚魚 → 成魚 → 採卵 のサイクルをすべて飼育下で回すことを指す。地中海で問題になっている「蓄養」が若魚を野外の資源から採集して育てるのと違い、飼育下で維持した個体を利用できるので、野生個体にかける負担が相対的に少ない。また、累代飼育を重ねることができるので、成長の早い個体を育種選抜できる点など食料資源としてみた将来性が大きい。

 

トロがジャンクフードになる日

養殖されたマグロは、赤身が少なく脂肪分の乗ったトロを多く含む。クロマグロの養殖が世界中で当たり前のように行われるようになれば、今とは逆にマグロの赤身が希少価値を持って取引されるようになるのかもしれない。

 

将来的には養殖個体の放流も?

人工孵化による稚魚の生産・輸送が可能になると次に来るのは種苗生産だ。マダイやヒラメでも今では一般的に使われている。ただ、飼育下で人工孵化して得た卵を長期間に渡って用いると、野生集団の遺伝的多様性を減少させる危険性がある。このあたりは、淡水のサケ・マスで散々議論されてることなので、マグロで二の足を踏むことはないと思うが。

人工孵化で得た卵の遺伝的多様性が低いのは、少数の親個体から卵を得るためだ。

つまり、たくさんの親から卵を得られるならば、問題は解決できる。とは言え、クロマグロの繁殖個体群を100~1000匹単位で飼育するのは現実的ではない。Wired Vision の記事「マグロを産むサバが、次世代の漁業を作る」で紹介された技術は、そうした問題の解決のカギとなるかもしれない。同記事中でもその可能性について触れているが、近縁で飼育しやすい小型種を仮腹として使うことができるようになれば、大型動物の遺伝的多様性を保護するための箱舟として利用できる。ただ、それがクロマグロを「保護」していることになるのか言えば難しい。野外の進化ダイナミクスから切り離されて保管されるなら、それは博物館の標本となんら変わらない。

 

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