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Sexual selection C.5 & C.6 性淘汰の実例 【生物学】【読書メモ】

Posted on: 9月 15, 2010

5章では、性淘汰の実証研究が紹介され、6章では過去の性淘汰に関する研究の網羅的なリストが挙げられる


wet katydid / Nick Harris1
クリエイティブ・コモンズ 表示-改変禁止 2.1

  • キリギリスのメスによる、オスのギフトをめぐる競争

キリギリス Katydid の仲間は、交尾のときに雄が精包という形でメスに栄養を提供する。特に大きな精包を作る Anabrus simplexMetaballus litus では、性役割が逆転して、オスをめぐってメス同士が競争する。性淘汰の予測として、餌が豊富にある環境では雄は多くの精包を作れるので、メスの競争も弱くなるが、餌が少ない環境では精包をめぐるメスの競争は激しくなると考えられる。Gwynne とSimons (1990)は、野外環境をケージで仕切って餌環境をコントロールすることで、上の予想が正しいことを証明した。

  • Endlerのグッピー、オスの色彩とメスの好み

グッピーPoecilia reticulata は野外では捕食者のいる川といない川によって大きく形質が異なる。捕食者のいる川では早産早熟になり、色彩が地味である。こうした河川間での形質の差異が自然淘汰によって起きたことを証明する進化実験を行った。底砂の粒度と捕食者の有無で条件の異なる池を用意し、数世代から数十世代飼育した。捕食者であるシクリッドCrenicichla alta に晒された池では、そうでない池よりスポット模様が少なかった。また底砂の粒度が荒い方が、一つずつのスポットは大きくなった。

また同時に、体色はメスの好みの指標にもなっている。グッピーのスポット模様はカロテノイド色素によるが、餌に含まれるカロテノイドをコントロールした実験から Kodric-Brown (1985) は、グッピーのメスが主にオスの明るいカロテノイド色素を好んでいることを示した。


Physalaemus pustulosus / brian.gratwicke
クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1

  • Tungara frogの求愛の鳴き声

カエルの仲間の Physalaemus pustulosus も他のカエル同様に、メスを惹きつけるためにオスが鳴き声で求愛する。メスは大抵オスよりずっと体が大きいので、体の大きな雄と交尾した方が卵の受精率が高くなる。Ryan ら(1990) は、メスを円形の入れ物の中央に入れて両サイドからオスの鳴き声をスピーカーで流すと、メスは体の大きいオスの鳴き声を好むことを示した。

メスを惹きつけるためにオスは鳴く一方で、メスを独り占めできる状態にある単独のオスが鳴くことはない。これは、鳴き声を出すことに対して別の淘汰圧が働いているからだ。捕食者に見つかる危険性がその原因だろう、カエルを捕食する狩猟性のコウモリが鳴き声に惹かれて反応することも、Ryanらの研究で分かっている。


Red-winged blackbird / dbaron
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.1

  • ハゴロモガラスの翼の赤い肩章

ハゴロモガラス Agelaius phoeniceus の翼の赤い肩章を塗り潰したり、面積を広げてみる。赤い模様を黒く塗りつぶすと、縄張りに入ってくる侵入者が増える。雄同士が競争する際に、赤い模様が大きい方が有利になることが分かった。

  • widowbird の長い尾羽

著者のAndersson 自身が行った実験。尾羽を切って短くして、別の個体に貼りつけて長さを変えてやると、長くした個体は通常の個体以上にメスから好まれた。ハゴロモガラスの場合とは逆に、widowbirdの長い尾羽は雄同士の競争には影響しない。

  • ゾウアザラシのハーレムと性的サイズ二型

ゾウアザラシの仲間は、雌雄で三倍近い性的サイズ二型が見られる。これは海岸で繁殖するために集まるメスをオスがハーレムを形成して独占する繁殖システムの結果だと考えられる。Le Bouef と Reiter (1988)は、8匹のオスが348匹のメスを妊娠させたことを報告している。横軸に年齢、縦軸に繁殖成功の平均値をプロットすると、メスは2歳以降の毎年コンスタントに繁殖するのに対し、オスは8~12歳の間だけ急激な山形を描く。

大きな体が有利なのは、オス同士の競争で勝利するだけでなく、ハーレムを維持する体力にも必要だからで、海岸で繁殖する90日ほどの間に順位の高いオスは体重の40%近くを失ってしまう。順位の低いオスでは相対的に少ない34%しか失わない。

  • アカシカの二次性徴

Clutton-Brockら(1982, 1988)による16年間にわたる、スコットランドでのアカシカ Cervus elephaus の野外調査の結果が紹介される。雌雄では次の繁殖までの期間、繁殖成功、子供の生存率が異なる。メスは主に餌資源の量によって繁殖成功が決まるが、オスはメスをめぐる競争に勝ち、ハーレムを維持することが繁殖成功を高める上での制約となっている。雄同士の競争は激しく、しばしば致命的な負傷をおうこともある。スコットランドのRhum では、繁殖期には23%のオスが負傷し、6%は回復不能な傷害を受ける。ヨーロッパの別のアカシカの集団では、繁殖期の最もポピュラーな死因が、競争による負傷だ。

 

第6章では、性淘汰に関する研究のメタ的な解析と文献リストが紹介される。リストの内容に興味がある方は、Google Books で部分的に検索できるので、そっちをご覧下さい。この本が書かれた1994年の段階で、232の研究186種が対象となっている。

 

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