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情報のストリームは人に何をもたらすか 『ネット・バカ』 【IT・ガジェット】【読書メモ】

Posted on: 2月 5, 2011

原題:The Shallows
邦題:ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
著者:ニコラス・G・カー
訳者:篠儀直子
出版:青土社, 2010, 7, 30

 

先進国に限らず世界的に、インターネットに接続して動画や写真、文書を楽しむ時間はますます長くなっているが、それがわれわれの脳にどのような影響を与えるのか?
カーはまず、アメフラシの触覚刺激に対する反射の学習や、脳に損傷を受けた患者の治療過程の紹介を通じて、生物の神経系がもつ強力な可塑性を示す。われわれの脳の中には、決まった作業をこなすテンプレートだけがあるのではなく、入力された刺激に応じてダイナミックに再配線を繰り返すネットワークがあるのだ、と。

次に時計の発明により、客観的な時間の基準があたえられたことから、人間はみずから創りだした発明により、外界の認識方法そのものを変化させていくことを示す。インターネットが情報収集の主要な経路になることは、単に読書という昔からの趣味がなくなることに留まらず、われわれの根本的な情報処理の仕方を大きく変えるというのだ。インターネットの出現は、読書に代表される、ひとつの物事に深く集中して沈思黙考する習慣をなくしてしまうと危惧を提示する。

読書と比べて、インターネットは情報が格段に多い。それが、欠点にもなりうることを心理学的な実験を通じて紹介する。写真や図による視覚的情報を含んだ複雑なテキストは、脳に大きな認知的負荷を与えるため、主観的には、『理解したという満足感』が大きいにも関わらず、理解の度合いでは文章だけのシンプルなテキストに劣る場合があることが示される。

カーの主張は以上のようなものだ。

 

異質な情報の並行処理能力こそが現代のカギ?

しかしながら、Twitter や facebook のようなソーシャルコミュニケーションサービスが拡張した結果、異質な知識や技術をコラボレーションするコストは年々下がってきている。それだけでなく、社会のあらゆる分野で複雑な問題の解決が求められるようになったので、社会的に評価され、認められるような成果を出すには、チームワークが必須となっている(WIRED VISIONの『天才の時代は終わった」か』)。こうした社会においては、インターネット型の思考の方がそもそも適応的なのかもしれない。

カーが例示した実験は読解やパズルのような単純な問題で、インターネットの最大の長所でもある、様々な質の情報を複数の場所から取り入れ、試行錯誤しながら知識の吸収を行う、という能動性が活かされない条件下の実験のように思える。インターネットに伴う「注意散漫さ」は、そうした異質な情報を効率的に処理していく能力を身につける上で必要なコストなのかもしれない。

 

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