水槽と家具

高水温が稚魚の発生と成長に与える影響【生物学】

Posted on: 5月 12, 2011

Plos one に掲載された論文の紹介

Temperature Influences Selective Mortality during the Early Life Stages of a Coral Reef Fish
Tauna L. Rankin, Su Sponaugle

Stegastes partitus, Adult (Bicolor Damselfish) / Smithsonian Institution
No known copyright restrictions(著作権制限なし)

スズメダイの仲間(Stegastes partitus)を材料にした研究。
野外集団を採集してデータを収集しており、16か月分、1500個体のデータから稚魚の成長に水温があたえる影響を明らかにしている。調査地はフロリダ、北緯24度なので、八重山諸島とほぼ同じくらいの緯度で気候は亜熱帯に属する。水温は20℃ 〜 28℃ と年間で約8℃ ばらつく。

スズメダイは孵化して、しばらくは浮遊期と呼ばれるプランクトン状態で過ごす。ある程度サイズが大きくなると、着底して親魚と同様の生活を始める。

この浮遊期の長さと水温が、稚魚の生存へ複雑に影響することが議論される。植物プランクトン量や風速も検討したが、成長との関係がはっきり示せたのは水温だった。

採集個体の耳石を調べ、成長速度や浮遊期の長さ、それらに対応する生存率を計算する(耳石には年輪状に成長が記録されている、参考:福井県水産試験場)。それらを簡単にまとめると、以下のような関係にあるようだ。

  • 成長速度 × 浮遊期間 = 着底時のサイズ(≒ 生存率)

着底サイズが大きいほど生存率は高い(これは夏でも冬でも変わらない)。
複雑なところは、成長速度と浮遊期の関係が季節によって逆転する点だ。

冬季は成長速度ができるだけ大きく、浮遊期が短い個体の生存率が高くなる。
夏季は中程度の成長速度を示す個体の生存率が低くなる(成長速度と生存率の関係が、中央が凹んだ二山になる)。また冬季とは反対に、浮遊期ができるだけ長い個体の生存率が高くなる。

まとめると、以下のようになる。

  • 【冬季に好まれる形質】 成長速度(高)    & 浮遊期間(短)
  • 【夏季に好まれる形質】 成長速度(高 or 低)& 浮遊期間(長)

最適な成長速度が水温によって変化するので、温暖化のように長期的な水温環境の変化が生じれば、この種の成長戦略は変化するだろう、と締めくくられる。

読み終わって気になったところは、耳石の大きさを使って稚魚期の成長速度を推定してる点(体サイズとの関係がよく分からない)。それと、成長速度と浮遊期の長さとの関係は、もう一歩踏み込んだ解析ができたら良いと思った。
議論では、成長速度と捕食リスクなどのトレードオフに焦点が当たっていたが、成長速度と浮遊期の長さの間には遺伝相関もあると思う。

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