水槽と家具

Archive for the ‘経済’ Category

今回の記事を書くきっかけは、アクア業界のマーケティング戦略のなかで、園芸好きの人に水草水槽を売り込もう、という話を何度か耳にしたことだ。園芸を趣味にする人と水草水槽を趣味にする層って、本当に共通点ある? それを考えるため、アクアリウムのサブジャンルとアクアリウムに関連する趣味についてまとめてみた。

 

アクアリウムのサブジャンル

知らない人にすすめる場合を想定して、アクアリウムのサブジャンルをリスト化してみた。
下に行くほど、一般人には共感を得られ難い。場合によっては変人扱いされることも?

  • 観賞魚(小型種から金魚まで)
  • 大型魚(水槽サイズが90cm以上必須)
  • 水草水槽
  • ビオトープ
  • 濾過マニア(器材フェチともいう・・・)

アクアリウムと関連しそうな趣味

園芸のほかには、どんな人がアクアリウムに興味を持ちそうだろう?
アクアリウムと関連しそうな趣味を挙げてみる。

  • ペット
  • 園芸
  • D.I.Y
  • インテリア

これらを組み合わせて、ポートフォリオを描いてみた。縦軸の属性は、植物や動物といった生物好きを表し、 横軸の属性は設備や水景といった空間構成を表す。

aqualium

 

水草水槽と園芸は趣味として近いのか?

最初の疑問に戻って考えてみたい。園芸は美しい花や実用性のあるハーブを育てるなど縦軸の生物好きという要素が強い。ポートフォリオ上に配置すると水草水槽は、植物メインなので園芸寄りの位置を確かに占める。しかし、水草水槽についてよく考えてみると、mask_inu さんの「水草の話」のように、特定の植物を育てること「そのもの」を目的に水草を育てている人は、あまり多くないように思える。

なぜなら、アクアリウムにおける水草水槽は、レイアウトを楽しむ、という横軸のインテリア的な側面が中心にあるからだ。趣味をやる上で要求される知識(pHや肥料の管理)など、園芸を楽しむ層と水草水槽を楽しむ層は見かけ上は似てるが、その内実としては必ずしも近くないのではないだろうか。水草水槽はインテリア性が強いので、緑の少ない都会で植物に癒しを求める層に対しては強い訴求力を持つだろう。

 

ポートフォリオから見えてくることは、アクアリウムの中でもペット要素の強い大型魚と水草水槽は、ほとんど別の趣味と言えるくらい別物だということだ。共通点は水槽や濾過器といった機材だけ。逆に言ってしまえば、アクアリウムの本質は、水槽という限られたハコに何を入れるか考えるのを楽しむ趣味、ということではないだろうか。

 

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Integrated Phylogenetic Chart / dullhunk

 

COP10 が名古屋で開かれている。生物の多様性に関する条約は、80年代から議論が始まり、1993年に国際条約が発効した。20年が経過したけど、解決に向かっているとは言い難い。生物多様性の話がややこしい数ある原因のひとつは、3つの異なる目的を内包している点だ。

  1. 生物多様性そのものの保護
    → 自然保護
  2. 生物に由来する資源の持続可能な利用
    → 農業や漁業
  3. 経済的に価値ある遺伝資源の利益配分
    → 化学物質や薬品(特許と販売)

1→3 と進むにつれ、人間の経済的価値という厄介な代物の中へ、ずぶずぶ突き進む。

ただし、1. の部分だけに議論を絞ったとしても、経済の輪の中からは抜けられない。生物多様性を保護するというのはつまるところ、それらの生物の生息地をできる限り原状のまま保護する事とイコールなのだ。都会のコンクリートジャングルでは、ライオンは生活できない。

土地、この有限なもの

自分の好きな淡水魚や水草はこれを理解するのに、わかりやすい事例だと思う。
これらの生物自体に経済的価値はほとんどない。食料や肥料に利用されることもあるが、それは全種数のうちの極めて一部でしかない。たかだか、数cmの小魚をまじめに観賞用として扱うのは、物好きな魚マニアだけ。一方、それらが生息する土地を見てみよう。

淡水生物の多様性の高い場所は、大河川と隣接する低地の湿地帯というのが圧倒的に多い。さて人間が農地や港湾として利用し、都市を作りやすい地形はどこだろう? 皆さんご想像の通り、低地の湿地帯だ。そうした土地は治水に成功すれば、農耕に最適な土壌を持つ広大な平原に置き換わる。ブラジルのアマゾン川は、パンタナールのような大湿原を持つが、経済成長に伴う森林伐採と農地開発にずっと悩まされ続けている。

東海大の鳥飼さんのサイトでみれる衛星写真から見る熱帯雨林の減少は衝撃的だ。同サイトでは熱帯雨林の減少のほかにも、規模はずっと小さいが関東平野で起こった同様の現象も紹介している。他の生物とヒトの土地利用が被ってしまった場合、開発したほうが、そうしない場合よりも圧倒的に利益は大きくなる。国連環境計画(UNEP)が全世界の湿地の経済的価値を3400億円と見積もったが、同面積の農地や都市が産む経済的な生産高とは、比較するまでもない。

人間にとって「無価値」な淡水魚類や水草を保全しようと思ったときでさえ、土地に起因する機会損失のせいで経済的な事情を無視できない。加えて言えば、そもそも一般人にまったく認知されてない(つまり、存在自体が知られてない!)生物を「保護」する意義を説明して、理解してもらう必要がある。間接的であれ直接的であれ、広告費が必要不可欠になる。つうわけで、現代的な文脈で「自然保護」を語る上で経済抜きの話なんてできんのですよ。

日本の自然保護活動をしている人達を見ていると、企業や経済活動を毛嫌いした人の声ばかりが大きく聞こえるが、結局それらを味方につけるか、経済的にねじ伏せる解決策が呈示できなければ、強引に開発へ押し切られるだけだ。美しい自然を保護するために、経済の泥海に手を突っ込まないといけないこともある。

 

 

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原題:The McDonaldization of Society
邦題:マクドナルド化する社会
著者:George Ritzer
監訳:正岡寛司
出版:早稲田大学出版部 2003, 3,31 初版第11刷

 

10年ほど前に発行された本。当時が将来をどう捉えていたかという視点で読むと面白い。

本書は、社会のあらゆる場所で合理的なシステム化(=マクドナルド化)が進んでいることを論証する。マクドナルドのサービスは、世界共通どこでも通用するという安心感を与えるが、そのためにサービスはマニュアル化され、限られた行動ルーチンのみが許される。そうした見かけ上の自由に満足し、官僚的な鉄の檻に人間が囲い込まれるのではないか、という主張が繰り返される。しかし、この主張に2010年の現状から見て、説得力があるように思えない。

1つは、人々がマックを支持し、受け入れた事実そのもの。
コカ・コーラ社の歴史について読んだときも感じたけど、新しい産業がこれまでの産業と生活スタイルを「変えるから悪」というのは、保守的に過ぎる。
2つは、合理化が行き着く先がガチガチの官僚主義であるという終末予想自体が疑問だ。

究極的なマクドナルド化であるIT産業で、働く人間が鉄の檻に閉じ込められているだろうか?そうではないだろう。TechCrunchのMichael Arringhton の言葉は力強く、官僚主義とは対極に位置するものだ。

誰もがシリコンバレーの修正案を持っているが、概して一番うまくいくのは、人々がシリコンバレーを放っておいた場合だ。起業家たちの狂気じみて(たぶん病気の)躁病的な夢物語が、最小限の市場の力に支えられて、われわれはここまで来た。そして、これからも同じように動いていく。

工業生産技術の進歩は、衣食住という基本的な物質的制約から人間を解放した。

日本を含む先進国の人間にとって重要なのは「生活」ではない、真に重要なのは物質的な基盤上に構築された、法律や企業文化、技術体系、価値観といった抽象化されたレイヤーだ、社会的ソフトウェアと言っても良い。

それをどうデザインし、組み換えてやるかで新しい価値が生まれるか決まるし、それを我々はやらねばならない。なぜなら、グローバル化した現在、既に確立された技術による生産と単純労働は、安い資源と人件費の抑制を求めて生産拠点を国外へ移動していくからだ。こうしたグローバル化による世界経済の変化は、「フラット化する世界」で、より詳細に論じられている。現代は、誰もが赤の女王の部屋にいる。同じ場所に立ち続けるには、走り続けなければならない。

合理化が社会の硬直化を招くというのは誤りだ、明確なルールが確立されることを通じてはじめて、人々は議論し、競争し、協力することができる。我々は鉄の檻でも、木の柵でも、野原に出ることも選ぶことができる。とはいえ、論理の展開こそリッツァと自分は異なるが、奇しくも結論は同じ場所にたどり着いた。リッツァは鉄の檻から逃れる方策として語ったが、自分はどんなルールが存在しうるか、また、どのルールが適切なのかを見極めるため、そう行動するべきだと考える。つまり、

  • 日常をルーチン化することを避け
  • 自分で考えて判断し、行動せよ
  • 「本物」の人間と接することに時間を費やせ

    自分の人生の物語を語るのは、他ならぬ自分自身であることを思い出そう

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Japanese Lacquer Tray / E. Bartholomew
クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1

 

漆細工は好き。頑丈だし、塗装面が光沢あってきれいだし。モダーンな雰囲気。

しかし、やはりというべきか値段が高い。桐箪笥もそうだけど日本の伝統工芸品は、同じ容積の本棚やウォーキングクローゼットと比較して5倍くらい高い、箪笥1個で30万とかそういうレベル。引出の角や取っ手といった細かいとこまで細工があるし、中の棚や仕切りも複雑だし。
値段が高いのは当然っちゃー当然だけど。うーん、やっぱ高いわ。

その値段で買う人はいるだろうから未だに商売が続いてるんだろうけど、一般的な家庭ではまず使われないよね。カラーボックス(ラッカー塗装!)1個1480円がデフォルトだったりするデフレの世の中だし。あと30年くらい経ったら、こないだ見て来た近代美術館の所蔵品として、冷暗所に保存されてそうな気がした。

 

あまりに高いので漆細工っぽいモノを自作できないか考えてたけど、類似の塗料として模型用に使われてるラッカー塗料がそれっぽいみたい。何か懐かしいなー、プラモデル作ってた高校時代を思い出す。生活環境が落ち着いたら家具のDIYにも挑戦したいぬう・・・


Amazon River / LollyKnit
クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1

 

PLOS One に掲載された論文の内容を紹介します。

Restricted-Range Fishes and the Conservation of Brazilian Freshwaters

Nogueira さんらによるブラジルの淡水魚の現状についての研究。

アマゾン川を有するブラジルは地球上でも最も淡水魚類相が豊富な地域です。この論文が主な典拠とした”Catalogo das Especies de Peixes de Agua Doce do Brasil”という魚類図鑑によれば、2587種の淡水魚が分布。さらに、2001から2005年の間に記載された新種だけでも250種を超えています。

その一方で、経済成長が進むブラジルでは水力発電用のダム建設や熱帯雨林の開墾が進んでいます。そうした生息地の減少や分断化の影響を淡水魚類は受けやすいにも関わらず、保護や分布についての研究は鳥類や哺乳類ほど進んでいません。この研究では記載論文や博物館での標本記録などを基にして、開発の影響を受けやすい分布が局限している種にしぼって、

  1. 分布が局限する種を含む流域はどこか?
  2. それらの地域と、天然植生の破壊や保護区の設定との関係は?

という観点でまとめられています。レッドリストのように特定のある種が絶滅の危機に瀕しているかどうか、というような情報ではありません。

調査の結果、約800種の魚類(全淡水魚類のうち32%)がブラジル全土の5%ほどの面積にあたる、540の流域に分布していた。また、植生の破壊や保護区が未設定であるため近い将来に危機的な状況になりそうな地域は220含まれ、そこには344種の魚類が分布していました。
ローカルなスケールでみると自然保護区として設定されてる面積が30%以下の地域が150ほどあり、、既存の保護区と魚類の分布との間にミスマッチがあることが分かった。

 

アクアリウムをやってる身として、自分達が飼育してる魚が野外でどんな状況にあるのか知りたいけど、まとまった情報を集めるのは難しい。今回、紹介した論文はそういう意味でとても面白かった。人口密度が異常に高い日本と違って、生態系や多様性を維持する上で重要な地域を重点的に保護するなど、うまく人と魚の住み分けができれば良いのだろうけどね。

うーん、WWFとか野生動物の保護を訴えてる組織は多いけど、やっぱり直接的にこうした魚類保護のための基金とかできたら良いのになあ。日本のアクアショップやメーカーの売上の0.5%をこうした原産地域の生態系保護に寄付するとかね。漁業保護の観点からのトラストはあるみたい(World Fisheires trust)。

何にせよ、保全事業は人と自然とのバランスを考えなきゃいけないから大変だよなあ・・・

 

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IMFから消費税あげろーって勧告が来たりしたから、日本政府の社会保障関係の支出について調べてみたまとめ。

社会保障費というのは、医療費+年金+その他福祉関連費用で構成されている。出費の内訳は医療費3割、年金の支払6割で毎年総額100兆円が動く(*1)。一方、それを支える財源は、社会保険料+税金+利子収入だ。内訳は社会保険料が5割、税金3割(国:地方=2:1)、利子収入と積立金で2割といった按配(*2)。

日本は少子高齢化しているため慢性的に、支出↑ 収入↓ という状態になっている。

それを反映して90年代以降、社会保障費はコンスタントに2%ほど増加している。この2~3兆円の社会保障費の伸び分をどこでカバーするか、というのが目下の大問題。仮に3兆円をすべて社会保険料に転化した場合、15歳から60歳で定義される労働人口が日本には約8400万人いるので、一人当たりで割ると36000円という値が出てくる。

毎年、36000円ずつ値上げしていく保険料・・・

人口の減少がゆるやかになって落ち着くのは、まだまだ10年以上先。これは正直きつい。

足りない分は借金でカバー!!

そんなわけで、「失われた10年」からこっち国債発行しまくって対応していたら、気付くとGDP比ダブルスコアの国債を抱えるハメになったわけだ。今年(=平成22年度)の日本の国家予算は92兆だが、その内訳を見ると社会保障費が30%、国債の償還費で22%を占める。さらに地方交付税の18%を引くから、政府が自由に使える金はたったの3割(*3)。

そらー、仕分けで切ったり叩いたりしても、ろくに予算の余裕が出てこないわけだ。

上のような状態を見たら、社会保障の維持のため歳入を増やす目的で消費税を増税するってのは、やむをえない状況だと思う。

問題は、消費税は低所得者ほど相対的な負担が強くなるっていう逆進性があるから、増税するにしても日本共産党が主張するような食料品など日用品を非課税にするとか、選挙で菅総理が少し触れたけど所得に応じた還付をするとか、そういった仕組みは不可欠になると思う。

国民の60%くらいは増税を許容してるってニュースも見かけた。なんだかんだで、増税が起きるだろうってのは織り込み済みになりつつある。ただし、税制は国の制度設計の根幹に関わる部分。選挙で選ばれた議員の方々は党利党略を捨てて将来のため、ぜひ知恵を出し合っていただきたい。

*1 国立社会保障・人口問題研究所の「社会保障給付費の部門別推移」を参照
*2 同、「社会保障財源の項目別推移
*3 財務省、「平成22年度一般会計予算の概要

 

原題:The 10000 YEAR EXPLOSION
         – How Civilization Accelerated Human Evolution –
邦題:一万年の進化爆発 文明が進化を加速した
著者:Gregory Cochran, Henry Harpending
訳者:古川奈々子
出版:日経BP社

人類に対する自然選択と文明化

この本の主張を三行で要約すると、

『人類の「生物学的な」進化は、大昔に止まった!
現代に生きる、ありとあらゆる地域の人種や民族は遺伝的にほとんど同質』

なんて文化人類学にありがちな主張は間違い!

生物学者には、そこはかとなく思ってる人も多いだろうけど、それ言ったらあまりにKYだから声を大きく主張してないだけなのに。下手な物言いすると、人種差別主義者扱いされるしね。けれど、人間の進化と歴史にも自然選択が大きな影響を与えた、という考えはダーウィンの「人間の由来と性選択」にまでさかのぼる進化生物学の大きなテーマだ。

ジャレド・ダイヤモンドは「銃・病原菌・鉄」で、南北アメリカでの白人の侵略の成功が病原菌耐性に拠ると主張している。以前に紹介したグレゴリー・クラークの「10万年の世界経済史」は、産業革命以前においての西洋では経済格差が子供の数の格差と直結してるって議論も出てきた。

農耕生活にヒトが最適化されてる + 地域・人種ごとでその度合いは異なる

っていうこの本の基本路線は妥当だと思う。

 

今の社会はヒトの多様性を受け入れる準備があるのか?

自分はこの本が先触れだと思った。

本書が解答を与えてはくれない多くの疑問の一つが、
「今の社会はヒトの多様性を受け入れる準備があるのか?」ということ。

たぶん、ノー

法律は、どの人間も平等で均質であることを条件に作られている。
保険や医療、教育もまだそう。社会倫理も同様、身長の高さや顔の美醜を「努力でどうにかなるもの」と考える人はあまりいない。では、「知能」も同じだと言われたら?

本書で印象的な話が、犬の品種による学習能力の違い。

平均的なボーダーコリーは、5回の反復で新しい命令を学び、95%の確率で正しく反応することができるのに対し、バセットハウンドは、80~100回繰り返し学習させても、正しい反応が得られるのは25%程度である。

ここまで極端じゃないにしても、学習で個人差があることを前提に置くか置かないかという、たったそれだけのことでも、今の社会のあり方は大きく影響を受けるはず。

この本が呈示しようとした世界観は、人権思想の発明以来の人類観に対する革命だと思うけど、生物学を学んでない人に、まだまだそれを「肌感覚」で伝えられる現状にはない。でも、それはたぶん遠い未来というわけでもない。

 

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