水槽と家具

Archive for 5月 18th, 2010

TwitterのDarwin2009から送られてきたツィートに興味をひかれて読んでみた。
元のツィートは以下の通り

Sympatric speciation without borders? http://ow.ly/1MuF9 *news and views*

紹介されてたのは、Molecular Ecology

Kathryn R. Elmer と Axel Meyerの2人による3ページの短報だけど、日本沿岸にも分布するアイナメ属の近縁種が同所的に種分化したんじゃなかろーかという話。背景には、北大の人達がやってたこのへんの研究が関係してそうな気がする。引用文献に宗原さんも挙がってるし。

 

同所的種分化の証明は、悪魔の証明?

同じ地域の遺伝的に交流のある一つの集団が、自然淘汰によって分岐して2種に分かれることを同所的種分化というけど、実例はまだ少ない(アフリカンシクリッドとヤシくらい)。地理的隔離の結果、固有の動物相が有名なガラパゴス諸島のダーウィンフィンチに比べて、一般的な知名度は低い。

そもそも、地理的に別の地域に分かれたことが「なかった」ことを証明するのは難しいしね。本論文中では Coyne & Orr (2004) *1 から引用して、同所的種分化の実証に必要な条件を4つあげている。同所的種分化が起こったと考えられる姉妹種において、

(i) sympatric contemporary distributions;
(同所的で連続した分布が見られること)

(ii) monophyletic sister taxa not based on hybridization;
(姉妹の系統は雑種交雑ではなく単系統であること)

(iii) substantial reproductive isolation;
(生殖隔離が存在すること)

(iv) a setting where a history of divergence in allopatry is unlikely.
(過去、異所的に分布していたことがありえそうにないこと)

 

体外受精で生殖後隔離の有無を検討

 

hexa 
きちんと同定してないけどたぶん、クジメ

上であがった条件に、アイナメ(Hexagrammos otakii)と姉妹種になるクジメ(H. agrammus)が当てはまるとこの論文では説明される。

両種は形態から生息地の好み、繁殖期の体色など、様々な点で異なり、野外の個体では生態・行動による生殖前隔離が原因で雑種が全く見られないが、実験室で体外受精を行うと雑種を形成できることが分かった。強い生殖前隔離と弱い生殖後隔離と言うパターンは、地理的な隔離なしで種分化が起きたことを示唆する。

 

うーむ、3ページ(実質、1ページ強)は少ない。もっとデータを見せろ! と思った。

同所的種分化の実証例ってまだ少ないけど、掘り下げてくともっとずーっとたくさんあると思う。特に魚類は、分布域が被ってるけど色彩バリエーション豊富な姉妹種が大量にいるってパターンが良くあるし。

  1. Coyne JA, Orr HA (2004) Speciation. Sinauer Associates, Inc., Sunderland.

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