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ブラジルの淡水魚相の現状【生物学】
Posted 7月 20, 2010
on:- In: 生物学 | 経済
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Amazon River / LollyKnit
クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1
PLOS One に掲載された論文の内容を紹介します。
Restricted-Range Fishes and the Conservation of Brazilian Freshwaters
Nogueira さんらによるブラジルの淡水魚の現状についての研究。
アマゾン川を有するブラジルは地球上でも最も淡水魚類相が豊富な地域です。この論文が主な典拠とした”Catalogo das Especies de Peixes de Agua Doce do Brasil”という魚類図鑑によれば、2587種の淡水魚が分布。さらに、2001から2005年の間に記載された新種だけでも250種を超えています。
その一方で、経済成長が進むブラジルでは水力発電用のダム建設や熱帯雨林の開墾が進んでいます。そうした生息地の減少や分断化の影響を淡水魚類は受けやすいにも関わらず、保護や分布についての研究は鳥類や哺乳類ほど進んでいません。この研究では記載論文や博物館での標本記録などを基にして、開発の影響を受けやすい分布が局限している種にしぼって、
- 分布が局限する種を含む流域はどこか?
- それらの地域と、天然植生の破壊や保護区の設定との関係は?
という観点でまとめられています。レッドリストのように特定のある種が絶滅の危機に瀕しているかどうか、というような情報ではありません。
調査の結果、約800種の魚類(全淡水魚類のうち32%)がブラジル全土の5%ほどの面積にあたる、540の流域に分布していた。また、植生の破壊や保護区が未設定であるため近い将来に危機的な状況になりそうな地域は220含まれ、そこには344種の魚類が分布していました。
ローカルなスケールでみると自然保護区として設定されてる面積が30%以下の地域が150ほどあり、、既存の保護区と魚類の分布との間にミスマッチがあることが分かった。
アクアリウムをやってる身として、自分達が飼育してる魚が野外でどんな状況にあるのか知りたいけど、まとまった情報を集めるのは難しい。今回、紹介した論文はそういう意味でとても面白かった。人口密度が異常に高い日本と違って、生態系や多様性を維持する上で重要な地域を重点的に保護するなど、うまく人と魚の住み分けができれば良いのだろうけどね。
うーん、WWFとか野生動物の保護を訴えてる組織は多いけど、やっぱり直接的にこうした魚類保護のための基金とかできたら良いのになあ。日本のアクアショップやメーカーの売上の0.5%をこうした原産地域の生態系保護に寄付するとかね。漁業保護の観点からのトラストはあるみたい(World Fisheires trust)。
何にせよ、保全事業は人と自然とのバランスを考えなきゃいけないから大変だよなあ・・・
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